7月12日(土)エコール・ド・東山
第二期を無事終了いたしました。
いつものように、「ちー」さんが、内容を詳細にまとめてご自身のブログにアップしてくださっています。(ありがとうございます!)日程の都合で、ご参加いただけなかった方、参加したけれど、復習したいなぁと思っておられたみなさま、こちらをご覧ください。
⇒ http://chee.ch/diary/2014071200/1.shtml#a010103
奇跡と外連――聖史劇というスペクタクル――
杉山
博昭
杉山さんの研究は、ルネサンス期フィレンツェの聖堂内や広場で上演された宗教劇について。博士論文をもとに本が出版され、7月5日に表象文化論学会で奨励賞受賞の表彰式があったばかりです。(おめでとうございました)
発表を聴いていて、聖史劇のように長年語られてこなかった行事や出来事が、私たちの「歴史」には数限りなく埋もれて、いや、「埋められて」きたのだと感じました。今の時代にまで伝わっている物事は、きわめて特殊な条件のもとに作られ守られてきたからだといえます。
「芸術」がそうであったことは6月の田中一孝さんによる発表「芸術と検閲」からも明らかになったことでした。そういえば、イタリアの思想家ジョルジョ・アガンベンという人が、アウシュビッツの真実は、生き残った人々の証言からは明らかにできないということを言っていたように記憶します。(うろ覚えですが…)真実を知る者たちは皆、ガス室に送られてしまったのだから、というわけです。杉山さんの言葉を借りるなら、「包含と排除」。私たちの目に晒されてこなかった真実を再構成すること、エコール・ド・東山に登壇してくれる若手研究者の尽きることのない課題と苦労は、これからも続きそうです。
さて、もう一点、どうしても触れておきたいことがあります。杉山さんの発表方法についてです。学会の発表では、その分野の専門家が集まるため、皆が知っていることについては話す必要がありません。ところが、エコールのゲストにとっては、およそ初めて聴く内容です。専門的な内容について、わかりやすく、しかもレベルを下げず発表をするのは至難の業です。
しかし、杉山さんの発表は、そのお手本となるものでした。シンプルなパワーポイント、原稿なしのプレゼン、祇園祭というタイムリーな話題、本の宣伝なんかも(ちゃっかり)織り交ぜながら、チラシに書かれていた三つの疑問を解き明かしていくミステリー仕立て。ほとんどの日本人には馴染のないキリスト教の宗教劇の世界へと、私たち聴衆をぐいぐいと引き込でいくものでした。
この回に数多く参加してくれた学生さん(杉山さんの後輩たち…私もそのひとりですが…)にとっても、実に勉強になる発表方法だったはずです。後日、杉山さんくらいになるとこういう発表もお茶の子さいさい「さすがです」とメールをしたところ、とても念入りに準備をしていただいていたことが明らかになりました。さりげないプレゼンに隠された周到な準備…。先輩、やはり、さすがです。
参加いただいた方々からは、
発表を聴いていて、もしかしたら自分の前世はキリスト教徒で
聖史劇を見ていたのではなかったかという気持ちになりました
とか、
お話を聞きながら かつてから感じていた文化や絵画の謎、
教会とスペクタクル性に関する疑問が、
自分のなかで答えに結びついた瞬間が何度もあり、
久しぶりに知的好奇心が満たされて喜びに震えるような思いでした
といった感想をいただきました。主催者による恣意的な引用?いえ、そんなことはありませんよ。念のため…
はるか遠くの日本人――日系ブラジル芸術の開化――
都留ドゥヴォー恵美里
(日系ブラジル人画家)「トミエ・オオタケ」は偶然テレビで紹介されていて、
その存在を知った方ですが、
(都留さんの発表から、)その他の日系ブラジル人の活躍も知ることができ、
有意義なひとときを過ごしました。
この日系ブラジル人画家達が、
日本のアカデミックな教育を受けていない所にも
興味を持ちました。
建築界の安藤忠夫や音楽界の武満徹 等、
日本のアカデミックな教育を受けていない人たちの、
海外での大活躍を見ると
日本の教育が、
伝統を重んじるあまりに、
また、日本流の「正しさ」が、
大切な個性を見逃しているのかもしれないと感じます。
世界で活躍できる日本人、を考えるとき、
日本の大きな課題があるように感じました。
自分の専門分野以外の世界を知ることで、
自分の世界の新しい発見があると思います。
こんなにも色々と考えていただき、しかも我々に送っていただけることほど嬉しいことはありません。ありがとうございます。
最後におっしゃっている「自分の専門分野以外の世界を知ることで、自分の世界の新しい発見があると思います」という部分は、まさに日系ブラジル人画家のブラジルでのあり方、つまり、ブラジルに同化することを意識した日系人画家たちが、日本人としてのアイデンティティを打ち出しながらも、ブラジルの代表的な芸術家としてもまた受容されたことに見ることができます。都留さんは、こうした彼らのあり方について、相手(異物)を取り込んで自身のものにしてしまうというオズワルドデ・アンドラーデ(1890-1954)の「食人宣言(食人主義)」をもとに探ろうとしているとのことでした。
毎回、思うようには進められていないと反省することばかりですが、第三期も10月より第二土曜日に開催予定です。今後とも皆さまと一緒にこの会を続けていければと切に願います。
さて、2012年11月に始めて以来、エコール・ド・東山では、京都大学大学院36名の若手研究者が発表し、のべ150名の方々が足を運んでいただきました。本当に有難うございました。そして、昼下がりのバーを提供してくださり、いつもさりげないおもてなしの心を尽くしてくださるバーとホテルスタッフの皆さま、スペシャルなケーキを用意していただいてくださっているパティスリーシェフの皆さま、本当に感謝しています。
今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
ふ~っ、長くなりましたね~。読んでいただいて、ありがとうございます。
今回は、女性パティシエがケーキの紹介をしてくださいました。
前々回まで、主催者が説明していたことがつくづく悔やまれます。
もっと前から、若きシェフたちに登場してもらったらよかったです。