2014年01月

次回エコール・ド・東山は、2014年3月8日(土曜日)14:00~16:00に開催します。
不思議な絵を描いたアルチンボルドという画家と、ギリシア哲学のお話です。


ジュゼッペ・アルチンボルド《ウェルトゥムヌス》と同時代人の詩人たち

小松 浩之

京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程 日本学術振興会特別研究員DC2
野菜、果物、動物、魚介類、はては農具、キッチン用品などを組み合わせ、奇妙な人物像を描いた画家アルチンボルド。その晩年の作品《ウェルトゥムヌス》では、四季を司る古代ローマの神に時の皇帝ルドルフ2世の姿が重ねられています。同時代人たちは、この肖像をどのように捉えたのでしょうか。本作品に捧げられた詩を手がかりに検討します。

「哲学」とは何か?―ソクラテスとプラトンを手がかりに

福田 宗太郎

(京都大学大学院 文学研究科 西洋古代哲学史研究室 博士後期課程2年)
「哲学」とは何なのでしょうか? なにか役に立つ営みなのでしょうか? 実は哲学の生まれた古代ギリシアにおいても、哲学はこうした疑問にさらされていました。古代ギリシアの哲学者ソクラテスとその弟子であるプラトンを参考に、哲学の内実について皆さんと理解を深めていきたいとおもいます。

開催場所:
ハイアット リージェンシー 京都 地下1Touzanバー
605-0941 京都府京都市東山区三十三間堂廻り644番地2
http://kyoto.regency.hyatt.jp/ja/hotel/our-hotel/map-and-directions.html

ご予約:
各回定員20名 参加料3000円(茶菓子付)
お申込みは、メールまたは電話にてお願いいたします。

電話番号: 090-6662-0360
定員になり次第、受付を終了させていただきます。お早めに!!ecoledetouzan@hotmail.co.jp

 

第14回の報告

第14回(2014年2月8日)の報告

エコールの日に私たち主催者が一番気になるのは、その日のお天気です。今回は、前日から大雪の予報が出ていましたが、午後には雪も降らず青空でした。とはいえ寒いなか、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。

「記憶のメカニズム」―ニューロンのはたらきからアルツハイマー病まで
寒竹 泉美

(京都大学大学院 医学研究科博士課程修了 博士(医学) 金沢医科大学協力研究員, 小説家

寒竹さんは、現在、小説家として活躍されています。1月には、尾崎紅葉の『金色夜叉』を脚本に書き下ろした「三夜叉~金色夜叉より」を着物姿で朗読されたのを見たばかり。実験室での日々はどんなだったのだろうってわけで、医学博士としての研究についてお話いただきました。

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内容については、参加者のおひとりが素晴らしくまとめてくださっていますので、こちらをご覧ください。⇒
http://chee.ch/diary/2014020800/1.shtml#a010101

いやいや、これ以上何を書くことがありましょうか…。こんなに熱心に聞いてくださる常連さんが、エコールを支えてくださっているのであります!

認知症患者のうち7割の人がアルツハイマー病ということで、その予防が注目されていますよね。ちょうど一か月前にNHKでも特集をしていましたから、ご覧になった方も多いでしょう。

いつかは果てる命だけど、いつまでも「健やかな」頭でいたい、とは思います。患者も生活を共にする家族もつらいから、予防できるなら素晴らしい。寒竹さんも20~30年くらいで進行を止める薬ができるのではないかとおっしゃっていました。研究者がさらりとおっしゃると、心が軽くなりますよね。記憶のメカニズム、病気が進行するメカニズムがわかってきたからこそ、予防や進行抑制ができるわけです。そこには地道な…ネズミの脳をスライスして電流を流す…実験とデータが役にたっているわけで、改めて基礎研究の重要さを実感しました。

けれども、はたして、認知症も諸々の病気も医学の力で克服できたとして、その薬を手に入れられるのか、はたしていつまでも健康な体と脳をもつ年寄りが豊に暮らせる社会なのか、さらなる高齢者増加、それにともなう世界的人口爆発とか、医学の進歩だけでなくてそれを受け入れられる社会基盤を作ることも必要なわけです。医学と倫理もむずかしい課題。社会・経済的格差は、日本だけでなくて世界的に解決しなければならないでしょう。


さしあたり、20~30年待てない私たちは、とりあえず自力でなんとかしなくてはなりません。勉強をつづける、現役で働きつづける、社会との関わりを持ちつづける、エコール・ド・東山に参加しつづける…とか? まぁ、そういうことにしておきましょう。

日本における「68年」学生運動のイメージ 
ティル・クナウト
 

京都大学大学院文学研究科  日本学術振興会外国人特別研究員  ドイツ・ハイデルベルク大学 日本学研究所 専任講師/日本史

今、このことを改めて考える日本人、どれくらいいるでしょうか。でも、ティルさんを囲んでの茶話会はかなり盛り上がっていて、ある世代だけでなくて次の世代にとっても記憶の痕跡として拭いさられることなく残っている出来事なのは確かなようです。

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そういえば、元首相・菅直人氏も東工大で学生運動にかかわっていたらしく、以前ウィキに「アジ演説が巧く、聴衆を集めるが、検挙を覚悟の上でゲバ棒で逆らってくるようなデモ隊の3列目には決して加わらなかった。巧妙なリーダー」で、警察・機動隊には「4列目の男」と呼ばれていたと書いてあってニヤリとしたのを思い出しました。


さて、東大・安田講堂の映像は私たちも折に触れて目にすることがあるけれど、京大の様子は初めて見ました。百万遍の角のところ? サークルの合宿みたいな無邪気な姿や、笑顔でリヤカーを引っ張って物を運ぶ学生の姿…浅田彰氏みたいな風貌の人もいるけど、彼は次の世代か?…は、今でも11月祭間近に目にする光景。違うのは、68年の学生が運んでいたコーラの瓶は火炎瓶だったということ。彼らは何に怒っていたのだろう…。

フランスなら「五月革命」とか、アメリカならベトナム戦争反対とか、怒りの矛先が見えなくもない。運動に携わった学生の社会的階層が、欧米(アッパーミドル)と日本(中・下層)とでは違ったという点を指摘する人がいるのは興味深いし、完璧な階層社会であるイギリスでは、学生運動が起こらなかったというのも、その点から見れば象徴的な気がします。


誰か理由を書いていないかしらとネット検索。いろいろ推測されているけれど、どれも後付け感が否めませんねぇ。赤軍とか「よど号」ハイジャックとか「あさま山荘」事件とか、これらはもう学生運動の域を超えているし…。団塊世代の方々に、語ってほしいですよね。
ティルさんは間もなくドイツに帰ってしまうのですが、口を閉ざす日本人に対して、ドイツ人のティルさんが研究テーマにしているところが面白いわけです。


今月のケーキ

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イチゴとホワイトチョコレートムースのケーキでした。葉っぱの形をしたチョコと赤いイチゴがキュート。そうか…もうバレンタインか…



今月のお花

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薄いオレンジのアマリリス?春を先取りするような、パステルカラー



 


 


 


 


 

次回エコール・ド・東山は、2014年2月8日(土曜日)14:00~16:00に開催します。
2月はアルツハイマー病の基礎研究と日本の学生運動についての発表です。

「記憶のメカニズム」―ニューロンのはたらきからアルツハイマー病まで
寒竹 泉美
(京都大学大学院 医学研究科博士課程修了 医学博士, 金沢医科大学協力研究員, 小説家)
脳はよくコンピューターにたとえられますが、そこには電気回路も メモリ装置もハードディスクもありません。あるのは無数の小さな  細胞だけです。複雑な機能をつかさどる脳が、どんな仕組みで 情報を伝えて、処理し、蓄えているのか。そしてアルツハイマー病の脳では何が起こっているのかをお話しします

日本における「68年」学生運動のイメージ
ティル・クナウド
(京都大学大学院 文学研究科 日本学術振興会外国人特別研究員, ドイツ・ハイデルベルク大学 日本学研究所 日本史専任講師)
1960年代後半の学生運動は世界的な現象でした。しかし、 同運動に対する評価は国によって異なっています。ドイツでは、「不思議なマルクス主義」を「やりすぎた」とする一方で、「対抗文化」「性の革命」「緑の党」を成立させたという積極的な評価もあります。これに対して日本では、「過激派」というイメージが 先行しています。そのことがどれほど歴史的事実に即しているのか、探っていきます。

開催場所:
ハイアット リージェンシー 京都 地下1階
Touzanバー
605-0941 京都府京都市東山区三十三間堂廻り644番地2
http://kyoto.regency.hyatt.jp/ja/hotel/our-hotel/map-and-directions.html


ご予約:
各回定員20名 参加料3000円(茶菓子付)
お申込みは、メールまたは電話にてお願いいたします。

電話番号: 090-6662-0360
定員になり次第、受付を終了させていただきます。お早めに!!ecoledetouzan@hotmail.co.jp

◆◇◆◇13回(20141月11日)の報告◇◆◇◆

エコール・ド・東山も回を重ね、太陽の観測であるとか天文学だとか反物質とか宇宙にかかわる内容を除いて、そのほとんどは、わたしたち人間が生み出した――技術・社会・思想・文化――についてでしたが、今回は、エコール初の動物についてのお話でした。なので、ちょっと頑張って内容をまとめてみましたよ。

アジアゾウの鼻先コミュニケーション

京都大学理学研究科 野生動物研究センター 博士課程3年

安井早紀

動物好きの安井さん、今はアジアゾウを研究中。修士課程最初の頃は、実験室で象やキリンの遺伝子を研究していたのだけれど、その過程で、だんだんとゾウ同士が何をしているのか、その行動に興味を持つようになり、博士課程では彼らの接触行動について、おもにタイにあるゾウの村で調査しているのだそうです。聴覚や嗅覚についての研究が多いなか、安井さんのテーマは触覚…つまり、あの長~い鼻の先で相手の体をさわることが何を表わしているのか…ということです。

さて、バンコクから長距離バスに乗ること7時間、スリン県の中心地からさらにバスで2時間離れたタクラン村にある「ゾウ村」。安井さんは、ここで何か月もの間、毎日一頭を決め、ついて歩いて、そのゾウが誰と何をしたかを記録することで、相手の口を触ることが多いこと、そのときの鼻の曲げ方が違う…U字型のときとS字型のときがある…ことに気がついたのだとか。この二つの行動を調べて、仲良しのゾウ達がU字型で触っていることが多かったり、興奮状態…水浴びを楽しんだり、別の動物がいてパニックや怖がっている…ときに、とりわけ頻繁に起こっていることから、鼻をU字型に曲げて口を触るのは、お互いに「なだめる行為」なのではないかと分析したのだそうです。IMG_1702















ゾウはふだん、背中と頭のラインがほぼ同じに保った姿勢であるのだけれど、威嚇するときには体を大きく見せるために頭をうんと上げるらしい。おや、威嚇の姿勢のときに鼻をS字型に曲げていることが多いぞ!ってわけで、楽しく遊んでいるときと喧嘩をしているときのゾウを観察。すると、喧嘩をしているとき…攻撃的な行動をしているときのほうがS字になっていることが多いという結果が出たのだそうです。さらに調べると、S字型にする行動は、大人同士では主に攻撃、子ゾウは遊びも意味していそうだとわかったのだとか。

参加者からは、

Q:鼻の曲げ方の違いで、触っているゾウのほうは違う行動を意味しているのだろうが、触られているゾウはそれを認識しているのか?

A:触られているほうも、触りかたを見ているので、相手の行動を視覚的にも認識しているだろう

Q:S字型で触られているゾウが、「いやだ!」と避けることはないのか?

A:避ける行為はあまり見られない

と、質疑応答も活発でした。

ゾウたちは安井さんの口を触ったかしら…U字だったのかなぁ…だったら違う動物ではなくて、仲良しのゾウとして認識されていたのかなぁ?聞いてみたらよかった…

さて、動物園には必ずいるし、「ぞうさん」なんて歌もあって、私たちには馴染みの深い動物。でも、ゾウは絶滅危惧種。日本ではまだまだ知られていないけれど、支援するサイトはこちら
http://www.surinproject.org/

イルカの声に耳を澄ませて-イルカ研究者の漂流記-

京都大学理学研究科 野生動物研究センター 博士後期課程

吉田弥生

研究活動だけでなく、女子中高生を対象にした理系女子養成講座、京大博物館や水族館での展示、海の哺乳類のことを広める会などで活躍中の吉田さん。イルカは何を伝え合い、考え、海の中でどんなふうに生きているのだろうか、それは私たち人間とは全く違うはずだという興味から、イルカの声の研究を開始。対象にしているのはイロワケイルカ。日本の水族館でも飼育されていて観察もしやすいし、白と黒に体の色が分かれていて変わっているな~、ということで選んだのだそうです。彼らの音声を目印に、何を話しているのか、居場所、どこを通って湾に入ってくるのかというようなことも調べるのだそうです。

野生のイロワケイルカが住んでいる南米チリでイルカを追いかけることもあるのだって。速度の速い小型ゴムボートに乗って観察することが多いのだけれど、ときに、ちっちゃな手漕ぎのボートだったりすることも!危険を伴う海での調査、大変そうだなぁ……でも、かっこいい…。

イルカってどんな動物?へぇ、クジラの仲間だったのかぁ。えっ、マジか、イルカは顎で音を聞くのだって!確かに耳らしきもの無いものね。それで私たち人間には聞くことができない高い音(超音波)まで聞けるなんて…。クジラとの違い、進化の過程、食べているものなど、知らなかったことばかり。

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彼らのように海のなかに住む動物たちにとって最も重要な感覚が、聴覚。それによって、相手を知り、相手の位置を知る。逆に、音を発して自分のことを知らせる。いくつかの発声方法と、その組み合わせで意味を持たせるらしい。進化の過程で、ある種類のイルカが、ひとつの発声法をなくしてしまっているだけれど、それに代わる音や超音波が発達しているのではないか、というのが吉田さんの仮説だそうです。

さてイルカは、物体に対する反射音で距離・形・質を識別し、それを繰り返しながら前にすすんでいく――エコーロケーション(音響定位)というらしい――のですが、それをどのように使っているのかを知ることで、彼らの行動を推測できるかもしれないということで、吉田さんは、水族館に飼育されているイロワケイルカで実験をしています。たとえば、相手に「接近しているぞ!」とか威嚇であるとかといった合図になっているかも、というわけ。これは、陸の生き物ならコウモリが持っているのと同じ能力。わたしたち人間界でも応用されているのだって。何だかわかりますか?病院の検査で使う画像診断装置(エコー)とか魚群探知機です。

車の自動停止装置は?同じしくみかしら?とネットでチェック。なるほど、車はレーダーかカメラを使っているらしい。細かい情報が得られるのはカメラだけれど、夜間や悪天候の時――ふむ、イルカにとって海の中の視界と同じ状況――に性能が発揮できないことから、両方搭載している車もあるらしい。

安井さんの発表でも吉田さんのでも、ゾウとイルカという陸と海の生き物の映像や声を聴かせてもらって、おふたりの調査を追体験しているような、そんな気分になりました。

最後に吉田さんは、飼育動物を研究することの意義をお話ししてくださいましたので、いただいた資料の内容をそのまま引用して、第13回の報告のしめくくりといたします。

飼育施設はこれまで主に、珍しい生き物を見せ物とする「エンターテイメント」であった。しかし現在、飼育施設の存在目的は、以下の4つが掲げられている。(詳しくは、日本動物園水族館協会HPへ http://www.jaza.jp/ )

種の保存 希少動物の保護

教育・環境教育 動物の生態や生きる姿を伝える教育活動

調査・研究 詳しい生態調査活動

レクリエーション 楽しい豊かな時間と場所を提供する

今後、飼育施設は「見せる」だけでなく、そこから得られる情報を整理し、よりよい飼育に生かして行くことが必要である。また、動物への興味を軸に地球環境を考える教育・研究機関としての役割を担うことが求められ、生き物を飼育する責任は今後益々大きくなっていくであろう。

安田さんや吉田さんを含めて、世界中で色々な動物の研究をされている京都大学野生動物研究センターの7割が女性なのだそうですよ。たのもしい!

詳しくはこちら→ http://www.wrc.kyoto-u.ac.jp/

 

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今月のケーキ
は、抹茶のレアチーズケーキ。苦くもなく酸っぱくもなく、まろやかな大人の味でした。シェフのみなさま、いつもありがとうございます。

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今月のお花
 松の内も終わったのだけれど、新しい年を祝うような赤華やか、つややかな緑伸びゆく
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