次回エコール・ド・東山は、2014年1月11日(土曜日)14:00~16:00に開催します。
1月はアジアゾウとイルカのお話です。

アジアゾウの鼻先コミュニケーション
安井 早紀
(京都大学大学院 野生動物研究センター博士後期課程3年)
ゾウは高度な社会性を持ち、個体間で様々なやりとりをします。このようなゾウの社会行動に興味を持ち行動調査を行った結果、ゾウは他個体を鼻先で触るとき、鼻の動きの違いで異なる内容を相手に伝えている可能性が見えてきました。今回はこれまでの研究結果をタイの村での調査の様子等と共にお話しさせて頂きます。

イルカの声に耳を澄ませて - イルカ研究者の漂流記 -
吉田 弥生
(京都大学大学院 野生動物研究センター博士後期課程3年)
水中で一生を過ごすイルカ達は、何を見て感じて生活をして いるのだろう。きっと陸上で暮らす私達には、想像もつかない 世界に住んでいるに違いない。そんな彼らの世界を覗いてみたい、なんて思いませんか?地球の裏側の海上で出会った イルカ達の生き様を、彼らの声に耳を澄ませながら、研究結果とともに ご紹介します。



開催場所:
ハイアット リージェンシー 京都 地下1
Touzanバー
605-0941 京都府京都市東山区三十三間堂廻り644番地2
http://kyoto.regency.hyatt.jp/ja/hotel/our-hotel/map-and-directions.html


ご予約:
各回定員20名 参加料3000円(茶菓子付)
お申込みは、メールまたは電話にてお願いいたします。

電話番号: 090-6662-0360
定員になり次第、受付を終了させていただきます。お早めに!!ecoledetouzan@hotmail.co.jp

12(20131214日)

寒いけれど快晴の土曜日、今年最後のエコール・ド・東山を終了しました。今年5月に開催して大好評だった中嶋さんの京都学派第二回、そして近代画家ルネ・マグリットについてのお話でした。今回は、参加者の皆様からの感想も紹介いたします。


 世界の見方をずらすこと
―ルネ・マグリットの絵画のもたらす「気持ち悪さ」―
利根川 由奈
(京都大学大学院人間・環境学研究科 共生人間学専攻 博士後期課程3年 日本学術振興会特別研究員DC2IMG_1640














見えるはずのものが見えない、いや、私たちが見ているものは、単に私たちの思い込みなのではないか、それを改めて気づかせてくれる絵画、それがベルギーの画家ルネ・マグリットの作品。でも描かれているものは日常品だったり、どこにでもありそうな風景だったりするから、最初は奇妙なことに気づかない。ただ「リンゴの絵か」と思う。次に、そのリンゴが常識では考えられないほど巨大だとわかる。「リンゴではないのか!?」と戸惑う。そういえば、子どものとき、リンゴは一人では食べきれないくらい大きかった。食が細くて給食を全部食べられずに半ベソをかいていた私には、コッペパンが巨大な怪物のように見えたな…。そういう感覚、大人になった今では忘れてしまっている。「リンゴ」という言葉が、勝手に頭の中で赤くて丸くて…というイメージを頭の中に結んでいる。IMG_1645














《これはパイプではない》 そうではなくて「パイプの絵」だというのは、ずいぶんあまのじゃくだなぁと最初は思ったけれど、実際にそうだし。ニヤッとしてしまうのは、自分も結構あまのじゃくなのか。もっとつきつめると、それは「マグリットの目から入った光が網膜に像を結んで、彼の脳が反応し、彼の手が動いて描かれたパイプの絵」を見ている私の目に映っているのであって、あなたの目には微妙に違う色や形に見えているはず。こんなふうに考えて言葉にするとめんどうくさい…ですね。う~ん、私たちを支配しているのは、イメージなのか、それとも言葉なのか…。しんどくなってきたので、このあたりで参加してくださった方からの感想を紹介しましょう。
芸術に親しんでこなかった私ですので、絵画への向き合い方を知ることができましたし、「視点をずらすこと」による視野の広がりを感じました。自分の中の見えない壁を超えるために、考えるよりも、とにかく博物館でも美術館でも行きまくって何かを感じなさい、とアドバイスを頂いたことがあるのですが、そのことの意味が解りました

たしかに。実際、同じ絵を見ても、展示の仕方や、展覧会場の環境、その日の気分とか体調にも左右されたりもします。そう、感じ方は人それぞれ。というわけで、めんどうくさいことを普段考えないようにしてるじゃないですか、私たち。ものごとを都合よく美化したりねぇ。今日もそんなこんなで無難に一日すごしたもの。だから「気持ち悪い」のも大切なのです。

さて、次は中嶋ワールド。

 「私」の忘れ方―西田哲学入門―

中嶋 優太

(京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期終了 大阪教育大学非常勤講師IMG_1686














私がマグリットのパイプの絵で感じたようなこと、それは中嶋さんが引用した哲学者たちの言葉にも置き換えられるような気がします。赤くて丸い、上にちょこんと枝がついている「物」を私たちはいつ「リンゴ」と呼ぶようになったのか。「リンゴ」ではなかったかもしれない…、にわかに不安になる。

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中嶋さんに確認したかったのは、たとえば、前に美味しくいただいた「芝エビ」、えっ、「バナメイエビ」だったの!?ってとき、何エビであろうがあのとき確かに「美味しい」という経験があったってことで、「それでいいのだ!」と西田幾多郎は言ってくれるのでしょうか。確かに、そこに「私」をねじ込むのは傲慢な感じがします。いや、食べているのは「芝エビである」という意識が「私」に働いていたかも…純粋な経験ではなかったかもしれない。疑わしい…だったらもう、そこには「エビ」なんて物すら存在しなかったとしてもおかしくないし、そこでも「私」の存在は危うくなるぞ…例えが卑近すぎる…という声が聞こえてきますので、他の方の感想をうかがいましょう。

西田哲学をどのように捉えていけばいいのか、入門を学ぶことができました。…私の中の疑問の一部にヒントを頂きましたし、西田哲学と現象学との違いについても少し感じ取ることができました。西田哲学と出会い、視野・世界観が拡がり、前の研究でわからないままだったことにぱっと光が当たり、急に見えてきたような体験をしたのですが、それをどう今の私の研究、さらには実践に活かしていけばいいのか、言葉になりにくい経験をどう言葉にしていくのかという部分とも繋がるのですが・・・。ここの部分は、事象に向き合いつつ、これからも考えていこうと思います。皆さまと一緒に、いっぱい質問してしまい、ケーキを…召し上がられる暇も無い程の議論になりました。

素晴らしい感想、ありがとうございます。エビを引き合いに出した自分が恥ずかしいです。中嶋さんが「ここでお話したことがすべてではなくて、こういう考え方もあるのだなと思ってください」とおっしゃったことを心の支えにします。

さて、今月は「ずらす」のが、どうやら統一テーマになっているようだと感じられた方も多かったのではないでしょうか。利根川さんの発表で私たちは「視線をずらし」、中嶋さんのお話を聴いて今度は「個人をずらす」「個人としての私をずらす」ことになりました。主催者としては、全く意図していなかったことでした。けれども、ものごとを突き詰めていくと、それはどこか一つに収斂していくのかしら、と感じるのでした。とにかく、毎月一回だけでも、こうして脳をフル活動させるのは悪くないでしょう。

今月のケーキ

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「今月のケーキは何でしたか~」と聞いてくださらなければ、紹介するのを忘れたまま茶話会を終了するところでした。「オレンジと栗のムース」でした…。常連のお客さまに助けられています。


今月のお花

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赤い実、小さいリンゴ、大きな丸い花器、…マグリットのリンゴ?

白いカウンターに映える


Merry Christmas & Happy New Year!IMG_1593