5月18日土曜日、第七回エコール・ド・東山を終了いたしました。
次回は6月15日土曜日14:00~開催いたします。
まず16世紀ローマの都市計画にどのような目論見があったのか、次に、待望の京都哲学についてわかりやすくお話していただきます。

「バロック・ローマ嚮導:教皇シクストゥス五世の街路網計画」
 前川 文 (京都大学大学院人間・環境学研究科 博士後期課程学修認定)
 「総ての道はローマに通ず」とは古代ローマ帝国の隆盛に由来する言葉ですが、ローマの市内では、道はどのようになっていたでしょう。16世紀、街路は、宗教改革に対抗してローマを権威ある都市にする必要のあったカトリック教会にとって、単なる通路とは異なる役割を担い始めていました。その戦略や代々の教皇の思惑を探ります。

日本の西洋哲学者、西田幾多郎
中嶋 優太 (京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期終了 大阪教育大学非常勤講師)
 明治以降、日本は西洋文化を種々の局面で吸収します。今日大学で学ばれる様々な学問、そして哲学も、そのようにして新しく日本人が取り入れた西洋文化の一つでした。西洋 文化が新鮮に感じられていた時代の雰囲気を想いつつ、その時代に哲学者として生きた西田幾多郎の思索の意味を考えます。


2013
615(土) 14:0016:00(開場13:30
ハイアット リージェンシー 京都 地下1階Touzanバー

各回定員20名 参加料3000円(茶菓子付)

お申込みは、メールまたはお電話にてお願いいたします。

ecoledetouzan@hotmail.co.jp 電話番号: 090-6662-0360

定員になり次第、受付を終了させていただきます。ご予約はお早めに!

第七回の報告
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5月18日土曜日、太陽の光まぶしく、ホテルの竹林や木々の新緑が美しい日。地上の生物にとっては命の源ともいえる暖かい光を届けてくれる太陽について、そしてその恩恵を受けて育つ植物についてのお話を聞きました。個人的な感想が中心となりますが、ご紹介します。

「最先端観測衛星でみる太陽のほんとうの」by 渡邉 皓子
2013_5_18 013 昨年は、金環日食で太陽観測はちょっとしたブームでしたよね。今日の発表では、さらに太陽の表面をクローズアップ、黒点、巨大フレアの噴出、フレアループと呼ばれるプロミネンスの現象、宇宙から見たオーロラなど、いままで見たことのなかった映像をたくさん見せてもらいました。いずれの現象もダイナミックで神々しさを感じるほど。「表面の微細な構造まで分解し、動画を撮影できるのは太陽」が地球に一番近い恒星だからこそ。不思議なのは、その表面から離れれば離れるほど温度が高くなっているということで、未だ大きな謎なのだとか。解明できたらノーベル賞ものだそうですよ。
2013_5_18 010 最後に見せてもらったのは、北極圏や南極圏でみられるオーロラ。コロナの質量放出が数日間かけて地球に到達したもので、地球の磁気圏を激しく揺らしている現象。太陽の活動が活発な時期はオーロラも発生しやすいのだそうです。観に行くのなら、太陽の活動がピークとなる2016年がおすすめなんですって。北欧やアラスカ、行ってみます?「太陽を理解することは宇宙を理解する第一歩!」という渡邉さんのとてもわかりやすいお話に、わたしも自然科学の世界へと第一歩を踏み出せた気持ちになりました。

2013_5_18 060 最初の発表のあとは、毎回お楽しみのデザートタイムです。今回は、市場に出回ったばかりのアメリカンチェリーを使った可愛いケーキ。トッピングにスティック状のメレンゲのお菓子が。口に含むと、ほんのりと薔薇の香り!旬の果物と花の絶妙なハーモニー…ピンクとホワイトのムースの層が色鮮やかで、センスあふれるハイアットならではの一品でした。







「植物の気孔づくりの戦略」
by 菅野 茂夫
2013_5_18 037 参加者の皆さんが「なつかしい」とおっしゃっていたように、植物の気孔…その存在を知ったのは、中学生の頃だったかなぁ。
 菅野さんが所属する研究チームは、気孔の数を増加させるシグナル因子を発見して、それを「stoma(気孔)を生み出す(generation)という意味」で「ストマジェン」と名付けたそうです。植物にストマジェンを過剰に作らせると気孔は増え、その逆だと減る。わたしが面白いと思ったのは、化学的に合成したストマジェンの液に植物を「ぽちゃんとつけておく」だけで、気孔の数が劇的に増えること。このシグナル因子が、葉2013_5_18 046っぱの表面ではなくて内部(葉肉)にあるものだということだったのに、内側からでなくて外側からでも気孔の形成に作用するのは不思議です。それは例えば、わたしたちの肌が本来は内側から形成されるものなのに、化粧水やクリームを塗ったりして衰えた肌を整えて活性化させようとしているのと似ているのかしら?(違うな…)
 さて、ここでひとつクイズです。産業革命以降、気孔の数は増えたか、それとも減ったか。「減少した」が正解。大気中のCO2が増えたことに原因がありそうなのですが、気孔の数を減らしているという植物のメカニズムについては未だ解明されていないのだとか。けれども人為的に気孔を増やしたり減らしたりすると植物がどうなるのかを観察することで、その原因もまた解明できるかもしれないとのこ
とです。
その後の実験では、気孔の数を減らした場合、植物は乾燥に強くなり、増やすとCO2の吸収力がアップすることがわかったそうです。
 渡邉さんや菅野さんは、観測・観察、仮説の設定、実験を日々繰り返し、事物や現象の根本的な原因を探られているのですが、なぜそうなるのか、こうしたらどうなるのかと実験をくりかえす基礎研究の面白さに触れることができた気がします。たとえば気象予測や太陽エネルギーの有効活用とか、2050年には93億に達すると予測されている人口増加、それに伴う食糧危機への対策(砂漠で農作物をつくるとか)だとか、昨今きわめて問題になっている大気汚染や環境保全など、私たちはすぐ、こうした研究がどう役立つのか、その終着点ばかり考えがちです。けれども、今日聴いたような基礎研究があってこそ、そこから未知への可能性・不可能性が判断可能となってくるのでしょう。
 渡邉さんの発表で太陽の詳細を見たあと、菅野さんの発表で植物→細胞→遺伝子とさらにミクロな世界へと、全くの門外漢が自然科学へと近づいた二時間でした。
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 さて、いつものようにホテルのレセプションに置かれていた花をご紹介して報告をしめくくりましょう。草花のようなのに、ひとつひとつ可憐な白い花が集まってボリュームある房をゴージャスに見せるアレンジの妙。